2022-01-01から1年間の記事一覧

『Coda あいのうた』 ろう者を主題にしたのなら決定的問題がある

『Coda あいのうた』はろう者の家族と健常者の娘の関係を主題とした点で非常に稀有で演出も素晴らしい作品だった。展開こそ簡単に読めるものの、演出が上手いので観客は飽きることなく楽しめる。しかし、全体的に素晴らしいがゆえに最後の結末にはがっかりし…

アピチャッポン『MEMORIA』 これは決してSF作品ではない。

アピチャッポン・ウィーラセタクン『MEMORIA』 衝撃の謎の宇宙船は隠喩だ アピチャッポン監督の『MEMORIA』で最大の衝撃といえば、ラスト、森の中から謎の宇宙船が現れ、主人公ジェシカを襲っていた爆裂音の正体であったことが明かされたことだとだれもが思…

映画『偶然と想像』第2話「扉は開けたままで」について

偶然と想像 第2話 扉は開けたままで 濱口竜介監督の3本からなる短編集『偶然と想像』はすべて、偶然性とかつて深くつながった、あるいはこれから深くつながれるであろう関係性への希望を題材としている。 さて、偶然の一つの説明としては、因果と因果の交…

映画『愛なのに』 現代における恋愛の問題点が凝縮されている

『愛なのに』 現代における恋愛のほぼすべての問題点が出尽くしている 叶わなくても多田浩司に告白し続ける矢野岬。 「多田さんにとっての私はたくさんいるかもしれないけど、」 「私にとっての多田さんは多田さんただひとりです。」 盲心的な恋をしたとき、…